厚生労働省は2015年、日本人の食事摂取基準からコレステロールの上限値を撤廃しました。
このことにより、「卵は1日1個まで」という制限も撤廃。
また、日本人間ドック学会では、2018 年4月より、総コレステロール値の基準値を撤廃。
では、コレステロールが高い食品は無制限に食べても大丈夫なのでしょうか?
総コレステロール値は高くても下げる必要はない?
そういった疑問が浮かんできますが、実際はどうなのでしょうか?
この疑問を解決すべく、ネットの情報を徹底調査してみました。

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何故、「卵は1日1個まで」の制限があったのか?

元々、厚生労働省は1日のコレステロールの摂取基準を設けていました。

男性:750㎎
女性:600㎎

1個50~60gの卵1個のコレステロールは200~240㎎と言われており、卵以外にもコレステロールを含む食品は多いことから、「卵は1日1個まで」と言われ出したようです。

卵2

コレステロールの摂取と高脂血症の関係

今までは、コレステロールの摂取が多い⇒高脂血症⇒動脈硬化⇒心筋梗塞・脳梗塞、という流れで考えられていました。
※現在では、「高脂血症」ではなく「脂質異常」という病名です。

即ち、コレステロールの摂取が多いと動脈硬化のリスクを高めるので、コレステロールが高い食品の摂取は控えましょう、というのが常識でした。

日本の摂取コレステロールの上限値は何故、撤廃されたのか?

理由はいくつか考えられます。

●アメリカ心臓学会の発表
●コレステロール摂取の上限値を算定する十分な科学的根拠がない
●食事によるコレステロール摂取量が、そのまま血中総コレステロール値に反映されるわけではない

アメリカ心臓学会の発表

アメリカでは、2013年に心臓病学会などが「コレステロールの摂取制限を設けない」としており、2015年2月に農務省と保健福祉省は「コレステロールを多く含む食品の摂取制限に関して新しいガイドラインから削除する方針」であることを明らかにしました。

食事によるコレステロール摂取量が、そのまま血中総コレステロール値に反映されるわけではない

アメリカでのコレステロールの摂取制限は、米国心臓協会などが「食事からのコレステロール摂取量を減らすことで、血中コレステロール値が低下するという明確な証拠がない」と主張したことに起因するようです。

厚生労働省は食事摂取基準からコレステロールの上限値を撤廃した理由を「コレステロール摂取の上限値を算定するのに、十分な科学的根拠が得られなかったから」としており、これはアメリカの動きに呼応したものであることは間違いないでしょう。
▶参照元:「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」 策定検討会報告書

食事によるコレステロール摂取量が、そのまま血中総コレステロール値に反映されるわけではない

今までは、「食事から摂取したコレステロール量=体内のコレステロール量」と考えられていました。

霜降り肉

しかし、現在では、食事から摂取されるコレステロールが20~30%なのに対して、体内で合成されるコレステロールが70~80%であることが明らかになっています。
※食事から摂取されるコレステロールが10~20%、体内で合成されるコレステロールが80~90%という説もあり。

さらに、コレステロールを食事から多く摂取すると肝臓でのコレステロール合成は減少し、逆に食事から摂取する量が少ないとコレステロール合成が増加し、体内のコレステロールは常に一定に保たれるようになっているというのです。

従って、食事によるコレステロール摂取量が、そのまま血中総コレステロール値に反映されるわけではないので、コレステロールの摂取量を問題にするのは意味がないことになります。

総コレステロール値の基準値廃止で何が変わる?

日本人間ドック学会は、2018年4月より総コレステロール値の基準値を廃止しました。

●総コレステロール値:(旧)基準値140-199⇒(新)基準値廃止
●HDLコレステロール値:(旧)40~119 ㎎/dl⇒(新)40~999 ㎎/dl
●non-HDL コレステロール:(新)90-149 mg/dl

▶基準値の参照元:総コレステロール値他基準値改定のお知らせ【日本人間ドック学会】

しかし、総コレステロール値の基準値の廃止=コレステロール値を下げる必要がない、と言う事ではないようです。

「HDLコレステロール」とは善玉コレステロール、「non-HDL コレステロール」とは悪玉(LDL)コレステロールのことであり、コレステロールの総量ではなく、内容重視に方向転換したということです。

即ち、高LDLコレステロール及び、低HDLコレステロールを脂質異常と見なし、生活習慣の見直しが必要になります。

やっかいなのは学会によって基準値の考え方が異なる点です。
横並びでないのが難しいところです。
また、ネットには2015年以前の古い情報も多く見られるので、注意が必要です。

総コレステロール値の基準値

厚生労働省の「生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット」には、以下の記述があります。

従来は高脂血症と呼ばれ、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪のいずれかが高いか、HDLコレステロールが低いことがその診断基準とされていましたが、総コレステロールが高い人のなかには、悪玉LDL コレステロールが正常で、善玉のHDLコレステロールのみが高い場合も少なからず含まれていること、そのHDLコレステロールが低い場合を「高脂血症」と呼ぶのは適当でないことなどから、2007年4月に日本動脈硬化学会がガイドラインの改訂を行い、診断名を「高脂血症」から「脂質異常症」に変更しました。

脂質異常症は、LDLコレステロールが140mg/dl以上の「高LDLコレステロール血症」、HDLコレステロールが40mg/dl未満の「低HDLコレステロール血症」、中性脂肪が150mg/dl以上の「高トリグリセライド血症 (高中性脂肪血症)」のいずれかで、総コレステロールはあくまでも参考値としての記載にとどめ、診断基準から外されました。

▶引用元:脂質異常症 / 高脂血症

総コレステロール値は下げなくて良いのか?

前述にように、総コレステロール値のみをみてもあまり意味はありません。
総コレステロール値はあくまでも参考値であって、注視すべきは以下の数値です。

●LDL(悪玉)コレステロール
●HDL(善玉)コレステロール
●中性脂肪

これの数値が基準値より多い、又は少ない場合に注意が必要です。

LDLコレステロールが140mg/dl以上⇒高LDLコレステロール血症
HDLコレステロールが40mg/dl未満⇒低HDLコレステロール血症
中性脂肪が150mg/dl以上⇒高トリグリセライド血症 (高中性脂肪血症)

従って、上記の3数値が基準値外である場合、基準値に収まるよう、生活習慣を改める必要があります。

LDLコレステロールを下げる方法

日本動脈硬化学会では、LDLコレステロールを下げる方法の一つとして以下の食事方法を推奨しています。

●食物繊維の多い食品を増やす。
●n-3系多価不飽和脂肪酸の多い青背の魚や、n-6系多価不飽和脂肪酸の多い大豆を増やす。
●飽和脂肪酸(脂身のついた肉、ひき肉、鶏肉の皮、バター、ラード、やし油、生クリーム、洋菓子)や、工業的に作られたトランス脂肪酸の多い食品(マーガリン、洋菓子、スナック菓子、揚げ菓子)は控える。
●コレステロールの多い食品(動物性のレバー、臓物類、卵類)は控える。

*参照元:コレステロール摂取に関するQ&A【日本動脈硬化学会】
【「コレステロールを下げる方法」関連記事】
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げるには?【専門家(医師)の見解】

HDLコレステロールを上げる方法

日本動脈硬化学会では、HDLコレステロールが下がる原因として以下のものを挙げています。

●喫煙や運動不足
●メタボリックシンドローム
●糖尿病
●栄養不足や消耗が激しい状態

従って、HDLコレステロールを上げるには以下の方法が考えられます。

●禁煙
●運動
●痩せる
●糖質制限
●十分な栄養を摂る
●ゆっくり休養する

中性脂肪を下げる方法

中性脂肪を下げるには以下の3つの方法があります。

●運動
●糖質制限:ケトジェニックダイエットがオススメです
●中性脂肪を下げる食品・サプリメントを摂取する

さて、ここで、最初に提起した疑問「コレステロールが高い食品は無制限に食べても良いのか?」を見ていきましょう。

コレステロールが高い食品は無制限に食べても良いのか?

これに関しても、日本動脈硬化学会が見解を出しています。

日本でも厚生労働省による「日本人の食事摂取基準2015年版」ではコレステロール摂取の上限値がなくなりました。
これは摂取したコレステロールが血液中のコレステロール値に与える影響には、個人差が大きく、どれだけまで大丈夫という数字が出せないためです。したがってコレステロールはどれだけとっても大丈夫という意味ではありません。

●現在,高血圧や糖尿病、喫煙など他の動脈硬化疾患の危険因子をお持ちでなく、LDLコレステロール値が高くない方⇒現在の食事内容でコレステロールを制限する必要はありません。

但し、飽和脂肪酸はLDLコレステロール値を増やすことが知られています。
コレステロールを多く含む動物性食品は同時に飽和脂肪酸も多く含みますので、このような動物性食品を摂りすぎないことをお勧めします。

●LDLコレステロール値が高い人⇒これまでどおり、食事でのコレステロール摂取制限が必要であり、同時に飽和脂肪酸についても必要

コレステロール基準値の改正【まとめ】

「コレステロール基準値の改正」には以下の2つがありました。

●日本人の食事摂取基準からコレステロールの上限値を撤廃[厚生労働省]
●総コレステロール値の基準値廃止[日本人間ドッグ学会]

これらによって以下の疑問が浮かびました。

●コレステロールの高い食品は無制限に食べても大丈夫?
●総コレステロール値は下げる必要が無い?

これらに関する回答は以下の通りです。

コレステロールの高い食品は無制限に食べても大丈夫?

基準値を出せないと言うだけで、どれだけ摂っても大丈夫ということでない。

特に、LDLコレステロール値が高い人は今まで通り、食事でのコレステロールの摂取制限が必要。

総コレステロール値は下げる必要が無い?

総コレステロール値ではなく、以下の3つの数値を見る必要がある。

●LDL(悪玉)コレステロール
●HDL(善玉)コレステロール
●中性脂肪

これらが基準値に収まるよう、生活習慣に気を付ける必要がある。

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