多汗症は、手の平、足の裏、わき、頭、顔などに大量に汗をかくのが特徴だ。
医療機関で採用されている多汗症の治療法にはいくつかの種類があり、原因や症状のレベルによって、対策が異なる。
多汗症の治療法には、公的医療保険の適用対象となるものもある。
保険適用対象を含む治療法をご紹介致します。

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多汗症とは?

多汗症には、全身性多汗症と局所性多汗症がある。
局所性多汗症とは、手の平、足の裏、わき、頭、顔など局所に大量に汗をかく症状をいう。

脇汗

多汗症のチェック

日本皮膚科学会の診療ガイドラインによると、「原因不明の過剰な局所性発汗が6ヶ月以上継続して認められ」、次の6項目のうち2項目以上を満たした場合に、「原発性局所多汗症」と診断される。

●発症が25歳以下
●左右対称(両側)に汗が出る
●家族歴がある
●睡眠中は発汗症状がみられない
●多汗で困ることが1週間以上ある
●日常生活に支障をきたす。
※参照:原発性局所多汗症診療ガイドライン 2015 年改訂版【日本皮膚科学会】

※上記の診療ガイドラインは2015年のもので既に7年経つ。新薬の登場
などを踏まえ、資料ガイドラインは年内(2022年)にも改訂される見通し。

注意すべきは、「多汗症の重症度は汗の量ではなく、患者の困り具合で決まる。」という点だ。

多汗症の原因

全身性多汗症の原因

■温熱性発汗:運動、高温環境、発熱など
■内分泌・代謝性発汗:更年期障害、甲状腺機能亢進症、糖尿病、肥満症など
■神経障害による発汗:パーキンソン病など
■薬剤副作用による発汗:向精神薬、睡眠導入薬、非ステロイド抗炎症薬、ステロイド薬などの服用
■感染症による発汗:結核、敗血症など
■特発性発汗:原因不明
※参照:「多汗症」の原因、予防法・対処法について~監修:神保町駅前皮膚科院長 佐藤 弘行先生【ロート製薬】

局所性多汗症の原因

■精神性発汗:精神的緊張によるもの(手掌、足底、腋窩など)
■味覚性発汗:辛いものを食べたとき(顔面)
■神経障害による発汗:胸部交感神経切除後など(体幹)
■その他:皮膚疾患による局所多汗症など

局所性多汗症の最も多い原因は、精神的緊張によるものといわれている。
※参照:同上

多汗症の治療方法

治療の種類

医療機関で採用されている多汗症の治療法にはいくつかの種類があり、原因や症状のレベルによって、対策が異なる。

●外用薬(塗り薬)
●内服薬(飲み薬)
●漢方薬
●ボツリヌス毒素製剤を注射
●イオントフォレーシス
●交感神経遮断術

外用薬(塗り薬)

腋にはそのまま塗るだけで問題ないが、手の平や足裏の場合は薬液を皮膚に塗り、さらにその上から被覆材で密着させることでより多汗症に対する効果が期待できる。

内服薬(飲み薬)

効果の程度にばらつきがあったり、副作用があったりするので、医師や薬剤師の説明をよく聞いて選択する。

漢方薬

どの種類の多汗症かによって処方される薬は異なる。

ボツリヌス毒素製剤を注射

欧米では腋の局所性多汗症の治療によく用いられる。
日本では腋窩以外は保険適用外の治療になる。

イオントフォレーシス

発汗の多い手の平や足の裏を、水を貯めた容器に浸し、10~20mAの電流を約30分間流す保険適用の治療。
これを8~12回ほど行うと、多汗症の改善に効果が期待できる。

交感神経遮断術

交感神経の働きによる多汗を抑えるために、胸部の交感神経を切除、もしくは焼くなどする治療法。

多汗症は何科?

多汗症は、基本的に皮膚科の領域となる。

各多汗症は上から下に症状に応じて治療が進む。

腋窩多汗症~脇汗

・塗り薬:外用抗コリン薬[保険適用]
・局所制汗剤:塩化アルミニウム製剤
・ボツリヌス毒素製剤を注射:重度のみ[保険適用]
・飲み薬:内服抗コリン薬[保険適用]
・マイクロ波や超音波を当てる

手掌多汗症~手汗

・局所制汗剤:塩化アルミニウム製剤
・イオントフォレーシス
・ボツリヌス毒素製剤を注射
・飲み薬:内服抗コリン薬[保険適用]
・交感神経遮断術:重度のみ※代償性発汗あり

足底多汗症~足汗

・局所制汗剤:塩化アルミニウム製剤
・イオントフォレーシス
・ボツリヌス毒素製剤を注射
・飲み薬:内服抗コリン薬[保険適用]

頭部・顔面多汗症~頭汗・顔汗

・局所制汗剤:塩化アルミニウム製剤
・ボツリヌス毒素製剤を注射
・飲み薬:内服抗コリン薬[保険適用]

全身性多汗症

・飲み薬:内服抗コリン薬[保険適用]

多汗症の薬の副作用

塗り薬

最近、公的医療保険が使える薬が相次いで出た。

腋窩多汗症(わき)の塗り薬で020年に「エクロックゲル」、2022年は「ラピフォートワイプ」が登場。
いずれも、抗コリン作用を持つ外用薬で、発汗にかかわる神経伝達物質のアセチルコリンの働きを防ぐ。

塗り薬は、刺激が少なく全身の副作用が少ないのが特徴。
1日1回の塗布で

飲み薬

外用薬を試した後で検討されることがある抗コリン作用がある飲み薬には以下の副作用がでる場合がある。

・口や目が乾く
・眠気が出る
・尿が出にくかったリ頻尿だったりする
・体の中に熱がこもる
・顔がほてる

内服抗コリン薬は、大事な行事の際など使うタイミングを見極める必要がある。猛暑での連続服用には注意が必要だ。

保険適用の治療法【まとめ】

医療機関で採用されている多汗症の治療法にはいくつかの種類があり、原因や症状のレベルによって、対策が異なる。

多汗症の治療法で公的医療保険の適用対象は以下だ。

・塗り薬:外用抗コリン薬[保険適用]
・イオントフォレーシス[保険適用]
・ボツリヌス毒素製剤を注射:重度のみ[保険適用]*
・飲み薬:内服抗コリン薬[保険適用]
・交感神経遮断術:重度のみ※代償性発汗あり
*日本では腋窩以外は保険適用外の治療になる
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